聖犬あすお伝説～第一ﾜﾝ｢僕、あすお。｣～

どこにでもある、5LDK、小さな庭つきの田舎の家にひとり…いや、

一匹、哀愁を漂わせた若干1２歳の犬がいる。

彼の名は｢あすお｣

ゴールデンリトリバーの母と、父はどこかの雑種のハーフの

間に、出来ちゃったけど結婚（同居）はしないというややダークな

状況の中、元気にたくましく生まれ成長した。

血統書onlyの家庭に、みにくいあひるの子の如く生まれた

彼は、生後1か月ですぐに里親探しに出された。

しかし雑種ながらゴールデンの気高さ、謎の父のワイルドさを

兼ね備えた彼は、その日の里親でナンバーワンの人気を誇った。

それを、抽選で当てたのが摩訶不思議機械人間、まっきぃ

であった。平成xx年▽月○日（覚えてないだけ）-運命の

出会いであった…

ある日のこと。あすおは夢を見ていた。

黒い服を着た、背の大きな男が家に入ってこようと

窓を叩き割ろうとしている。瞬時に危険と判断したが、

自分は子犬、他に家族は誰もいなかった。

喧嘩の仕方も、威嚇の仕方も、生まれたての自分には

わからない。でも何とかしなければ。

｢ワン！！！｣

生まれて初めて人に向かって吠えた。

｢わん、わん！！！わぅううううう。｣

人から恐がられるほど吠えているかはわからない。

怖い。怖い、怖い…早く帰ってきて…おかあさん、まっきぃ～…

ついに男が大きな声で吠えられては、近所の人に見つかるので

逃げ去った。

｢やったぁ｣……

つかれた…

がく。

あぁ、これは夢だったんだ。でも、解決してよかった。

その次の朝、いつものドッグフードに僕の好きなチーズに

ソーセージ。

｢わん！｣今度は嬉し鳴きってやつだ。

そしたら台所からお母さんが来てこう言った。

｢あすおちゃん、泥棒やっつけてくれたんだってね。

ちっちゃいのに、偉い子ね。今日は食べたらゆっくりおやすみ。｣

どうやら、本当にあったことだったみたいだ。

たたかって疲れて寝ちゃったから夢と勘違い。

そのとき、僕はふとゴールデンリトリバーの母の姿を思い出した。


…そして、首を振ってひとり思ったんだ。

｢僕のお母さんは、まっきぃのお母さん｣

何だか嬉しくなって、ピアノのある部屋をぐるぐると走り回って

ずっこけた。まだ足が短くてもつれちゃう。

早く大きくなりたいなぁ-

そしたら、気になってるハスキー犬のあの娘にも並べるのに…

僕は、前にまっきぃが言ってた｢寝る子は育つ｣を思い出して、

またふわふわのソファで、夕方までぐっすり寝たんだ。


　　　　　　　　　　　　　　～第一話　完～